調査報告2 こうして「リポソーム」は生まれた 熱き研究秘話

調査報告2 こうして「リポソーム」は生まれた 熱き研究秘話

調査報告2 こうして「リポソーム」は生まれた 熱き研究秘話※プロフィールは取材日時点のものです。

世界初の商品化にこぎつけたのは、安定性こそが鍵だった!

美容ライターナカジー

1ミリの10000分の1の微細なサイズで、しかもたまねぎのような層構造のカプセルって、作るのにすごい技術が必要だし、大変そう!

内藤 昇さん

本当にそうでした。僕がリポソームの研究に取り掛かり始めた1984年頃は、多くの化粧品会社が夢のようなカプセルを作ろうと開発に熱意を燃やしていました。でも、多重層リポソームはとても繊細でデリケートだからいろんな刺激物質に触れるとすぐ壊れてしまいますから、長期間(3年以上が目安)、さまざまな温度でもカプセル構造を維持することが必須である化粧品への応用は、とても難しかったんですね。

リポソームはテクノロジーの塊なんですよ

美容ライターナカジー

それでも、やり続けたんですね。

内藤 昇さん

着手から3年で、だいぶ目処がたってきて……
やめる理由はないでしょう。実現すると信じていましたから。

美容ライターナカジー

トータルで、どのくらいの年月をかけられたんですか?

なんて熱い思い!!これが世界初を生む秘訣に違いない

内藤 昇さん

商品化まで、実に8年です。かなり早い段階でリポソームの形状はできていたけれど、とにかく安定なものを作ること、そしてそれを実証することにいちばん時間がかかりました。実は、1964年にリポソームを発見したイギリスのバンガム博士の方法では、1回に数ミリグラムしか作れないんです。でもそれでは、大量生産できませんからね。安定性や安全性の検証、カプセルの有効性検証など問題は山積みだったなあ~。

美容ライターナカジー

どうやって安定化までこぎつけたんですか?

内藤 昇さん

まず、脂質の純度のレベルをあげて、カプセルが壊れて美容成分が漏れないようにしました。それから、酸化を防ぐようにすることとコレステロールを配合することで、安定化に成功!1992年、ついに発売にこぎつけました。店頭に商品が並んだ時は、感動で言葉がでませんでしたね。

若かりし頃!リポソームとともに

3年間にわたる安定性を実証!

美容ライターナカジー

本当に苦労の賜物だったんですね(*≧∀≦*)発売当時は、大反響だったんですか?

内藤 昇さん

いや、会社的に他のプロモーション商品があったりして最初の1~2年は正直売れませんでした。テクノロジーの塊ともいえる美容液は1度使ってみれば必ず良さがわかるはずだからと、自ら全国の支社を回って商品紹介にいったんですよ(笑)

「リポソーム」の撮影に命をかけた女性の力があってこそ!!

内藤 昇さん

実は、リポソームの開発にあたっては、新しい剤型ということもあって、肌への安全性など規制当局との認可に対する厳しいやりとりもありました。

美容ライターナカジー

そうだったんですね。

内藤 昇さん

それから申請にはリポソームを写真で撮影しないといけないという、厳しい条件もあったんですよ。リポソームの写真を撮影した本人に会ってみますか?

美容ライターナカジー

はい、ぜひ。
→→→さっそく、リポソームの撮影が行われている現場へ直行!

美容ライターナカジー

山下さん、こんにちは。リポソームの撮影についていろいろお聞きしたいと思い、来ました。早速ですが、このお仕事を始めたのはいつ頃ですか?

山下 美香さん

入社当初からです。学生時代の専攻は薬学でしたが、入社してから上司にこの電子顕微鏡で撮影するのが仕事だって言われたんです。上司と二人で本屋に行って、電子顕微鏡の本を読みあさったり、電子顕微鏡の学会に行ったりして研究しました。それから2年くらいしてから、リポソームの研究を頼まれて。

美容ライターナカジー

そちらの電子顕微鏡でリポソームを撮影したんですね。

山下 美香さん

はい、私の相棒です! といっても、こちらはデジタル対応した新顔で、当時の機械と違いますけれど。リポソームの研究にあたり、ナノサイズのものを見られる電子顕微鏡がやってきたんです。

美容ライターナカジー

お高かったんでしょうか?

リポソームの撮影についてのデータを綴った、当時のノート この電子顕微鏡でリポソーム構造を証明できたんです!

山下 美香さん

そうですね。その頃のマンションが買えるぐらいの値段です(笑)

美容ライターナカジー

きゃーΣ(゚∀゚ノ)ノ でも、1ミリの10000分の1という小さいサイズのリポソームを撮影するんだから、相当、精密な機械なんですよね。

山下 美香さん

それでもリポソームを撮影するのは大変で、この仕事だけに没頭させてもらいながらも撮影が成功するまでに約1年を要しました。普通に撮影すると真っ黒の丸い画像になってしまうんです。リポソームのたまねぎ状の層をきちんと出していくのが大変だったんですよ。本当にいろいろ工夫して、やっと見られるように!

美容ライターナカジー

特殊なノウハウが必要ですか?

山下 美香さん

はい、詳しくは秘密ですが、電子顕微鏡で見やすいように、リポソームの層を上手に染める前処理の作業がポイントなんです。ちょっとしたタイミングで全然写りが違ってくるので、経験の浅い人だと上手く染まらないことも多々あります。また、顕微鏡を観察する者にとっては当たり前の手順なのですが、ピンセットを使って3ミリ位の試料板の上に、染色処理したリポソームをのせていきます。0.1ミクロンの小さなリポソームを均一に並べるイメージで。

電子顕微鏡により、いろいろな成分の構造や性質を解明!

美容ライターナカジー

気の遠くなるような細かい作業!でも、こうやって不可能と言われていた撮影が可能となり、リポソームがきちんと多重層のたまねぎ状になっていることを世の中に証明できたんですね。

不可能を可能にする、熱い思いの職人がここにも!

そうしてこぎつけた認可!そして夢の商品化

山下 美香さん

リポソームが撮影できた時は、大興奮でした!よく他の研究者の方から「なんで、こんなにキレイに撮影できるのか不思議」と、いろいろ言われるんですが、実はテクニック次第なんです。

美容ライターナカジー

なるほど~。この写真は、商品の能書にも入っているんですね?

リポソームの撮影って難しいのね~

山下 美香さん

はい。美しいたまねぎ状の層になっていることが、ひと目でわかりますから。苦労を考えると、電子顕微鏡の分析を商売にしている外部の会社に頼んだらいいのにと言われたこともありましたが、化粧品の中身の事と電子顕微鏡の両方をわかっている人間じゃなきゃ、この写真は撮れなかったと思っています。
当時の開発担当だった内藤に、リポソームの構造をあれこれ聞きながら撮影に取り組んでいた頃が本当になつかしいです。

商品の説明書にリポソームの電子顕微鏡写真を掲載!!

美容ライターナカジー

それから、電子顕微鏡の撮影をずっと続けてらっしゃるんですか?

山下 美香さん

はい、そうです。多分それが自分の性に合っていたんです。リポソームとの出会いのおかげで、私はこの道で生きてこうって。最近は、ファンデーションの粉が肌の上でどのように並んでいるか、とか、電子顕微鏡で見ることのできる世界も広がりました。

美容ライターナカジー

では、もう電子顕微鏡でリポソームを見てはいないのですか?

山下 美香さん

いえいえ、リポソームの基礎研究は続いていますし、工場で製造しているリポソームのチェックにもずっと使っているんですよ。

美容ライターナカジー

お店に並んでいるリポソームも、電子顕微鏡の確認がされているんですね。

山下 美香さん

そうなんです。普段お客さまと接する機会は少ないですが、こういう形で繋がりを持っていることにやりがいを感じています。

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