いつまでも、健やかに、美しく

エイジング研究の先駆者 加治博士の研究コラム

加治和彦先生のプロフィールはここから

  • シリーズ1 人は60兆個の細胞でつくられている 「DNA」体の設計図
  • シリーズ2 細胞成長因子と細胞外のマトリックス 「細胞同士の話し合い」
  • シリーズ3 血管の内皮の役割 「健やかに」
  • シリーズ4 線維芽細胞と細胞外マトリックス 「皮膚の基盤」
  • シリーズ5 皮膚細胞とメラノサイト 「肌を美しく」 健やかさの表舞台
  • シリーズ6 運命の時計、テロメア 「それでも加齢は進む」
  • シリーズ7 ヒト細胞を用いた評価系の確立 「iPS細胞の登場」
  • シリーズ8 エビジェネティックス 「ルノアールの少女の肌をいつまでも」

研究コラムシリーズ1 - ヒトは60兆個の細胞からなる多細胞動物です

1つ1つの細胞の組立が他人と自分との違いをつくる

ヒトの体は、多くの動物と同様に、おびただしい数の細胞が集まって作られています。細胞たちは、図1に示すように、1つずつ、一列になって、面となってあるいは立方体となって、積み木の組み立てのように、体の部分を作ります。ヒトの顔が各々違うのは、その組み立てが微妙に異なるからでしょう。こう考えると、蝶の幼虫がさなぎを経て美しい蝶に変身するのも何の不思議もありません。

図1 ヒトの体を造り出す「細胞」の説明

1つの細胞に全ての設計図が入っている!

細胞の一つ一つには必ず体全体の設計図(ゲノム)がDNAの長い糸に書き込まれています。ですから、細胞一つありさえすれば、体を作ることが原理的には可能です。それに対して、パソコンや紙飛行機の破片からそれぞれを作ることはできません。同じように複雑な組み立てからなるパソコンとヒトではこのようにまるで作る原理が異なるのです。なぜそのような組み立てをしたのか? それは元来一つで生きてきた細胞が、分裂して数を増やしてもバラバラにならずにひとところにかたまっていたことによるのでしょう。

図2 パソコンや紙飛行機の破片からそれぞれを作ることはできません。

ヒトの細胞は、約60兆個の細胞からできてるって?

受精卵が分裂して卵割を繰り返して、ヒト個体ができます。ヒト個体は約60兆個細胞からなります。一つが二つ、二つが四つ、・・・と無限の分裂を繰り返して60兆個になる・・・というのはウソで実はその分裂回数はたったの46回です。46回分裂を繰り返すと60兆個になるのです。このおおよその数、50前後、を覚えておいてください。老化時計のテロメアのところでふたたび出てきます。

図3 2の46乗ってどれくらい?

血管の細胞の若さが、お肌を若く保つ秘訣?

ヒトの体は約200種類の細胞があるといわれています。神経細胞、心筋細胞、脂肪細胞、表皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞等々。命はこの細胞たちのどのように支えられているのでしょうか。図4を見てください。桶に命の水がたたえられています。桶は長さの異なった板で作られています。命の水は一番短い板に依存してこぼれます。この板に相当する細胞はなんでしょう?年を取るとおこりやすい病気は、心疾患と脳血管疾患です。このことからヒトは血管とともに老いると言われます。血管の細胞こそ内側から若々しさを保つ鍵になる細胞でしょう。

図4 お肌の潤いを若く保つ「命の水」を入れている桶の板が衰えると、「命の水」がこぼれていってしまいます。
次回予告、次回は「細胞同士の話し合い」を中心に進めます。